くちびるに歌を

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散らぬ牡丹の一つでいい。君の胸を打て。

ハリーポッターと呪いの子の感想。魔法に彩られた父と子の関係について。

念願の呪いの子見てきました!!

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1回目 プレビュー公演 6/17マチネ

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2回目 8/27 マチネ

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実は気せずしてハリーポッター役以外全く同じキャストさんだったんです。
ただ公演を重ねたこと、そしてハリーポッター役のアプローチの違いによって、全く異なる作品のように見えたのが興味深かったです。

 

まずは、ハリーポッターの違いから

 

ハリーポッター(藤原竜也)
ハリーポッター≠父親
精神が青年期ハリーポッターのまま大人になってしまった人物。人を導く側に立つことに恐れと不安を抱いているように見えました。正直ジェームスとリリーにとっても良い父親であったか心配になる域。
藤原ポッターの父親としての至らなさは以下2つの原因があると感じました。
自分の感情の価値が分からない
ハリーポッターって自己肯定感がかなり低いんじゃないかって思っています。「無価値な自分が他者に与えるものに意味はない」と心のどこかで思っているように見えます。だから自分が子どもに愛情を表現するという重要性を掴み取れないでいるのでは。
「選ばれた者」としての傲慢さ
彼は出生の影響からずっと人生の主人公でした。だから、どんな試練があっても彼は自分の物語として昇華します。息子が困っていてもそれはハリーポッターの試練の1つ。また、彼は作中自己肯定感の低さ故に、戦いで犠牲になった人たちを「自分のせいだ」と言いました。ですが、そもそも自分のために周りが犠牲になったと言い切ることは、自分を中心に見ているということの裏返しではないでしょうか。
そんな歪な父親であるハリーポッターですが、ラストの両親のシーンではアルバスが心配するくらい泣き崩れていて、ああ、この人の心の中にはずっとずっとひとりぼっちだった10歳のハリーポッターが住み着いているんだな。と身に染みて感じてしまいましたね……

 

ハリーポッター(石丸幹二)
ハリーポッター=父親
ハリーポッターの延長線上に父親があるように受け取りました。石丸ポッターは良い父親という役割を全うすることに長けている、つまりは要領が良い人物。しかし、アルバスには本質を見抜かれているように思います。だから、アルバスとは反りが合わなかったけど、ジェームスとリリーにはあんまり苦労しなかったかもですね。特にジェームスは要領が良いので……
ただ、彼も彼で青年期のハリーポッターが居座っている部分があります。アルバスに「お前が息子じゃなければ良いと思っている。」と言い返すシーン。完全にあれは売り言葉に買い言葉で端的に言うと大人気ない。彼の大人になれなかった部分は自分の感情が高ぶると表れるものなのかも知れません。ただそれを踏まえても石丸ポッター将来的にアルバスに寄り添えるようになるようになるんじゃないかな……という希望が持てる終わり方でした。

 

余談なのですか、自分の中でのハリーポッターの解像度が上がったことによりとある演劇作品のTRUMPシリーズの中のダリデリコというキャラクターの事がより理解しやすくなり頭を抱えています。
寄宿舎ものに父親との不仲は付き物……

 

 

アルバス/スコーピウス

初めに演技の変化について触れたいんですけど、呪いの子、アルバスの「ハーモニーの宮殿で暮らす?」のニュアンスとスコーピウスの「……え?」って返事の雰囲気が変わりすぎておいおいおいおいってなりましたね。

プレビュー公演
アルバス「ハーモニーの宮殿で暮らす?(冗談半分本気半分の声)」
スコーピウスの「……え?(同じくらいのトーンの声)」


8/27マチネ
アルバス「ハーモニーの宮殿で暮らす?(拗ねてる感情を押し殺したシリアスな声)」
スコーピウスの「……え?(様子が変わったので単純にびっくりしてる)」
アルバス「…………」
スコーピウス「…………(もしかして……)」
ローズが来るまでの沈黙が体感長くなった気がする……

関係性の揺らぎがよく分かって私は2回目がめちゃくちゃ腑に落ちました。


彼らの絆が恋愛みたいな友情でも、友情を超えた愛情でも、どれでも素晴らしいので幸せを願わずにはいられないですね……

 

スコーピウスはほんとに可愛い上、感情をむき出しにする場面が最高でした。願わくばサソリ王の場面の尺を伸ばして欲しい。
そして、アルバスはシリアスな演技がより真に迫るようになりました。オーグリーに拘束されて以降のとことかずっとやめろって叫んでた気がするし、ずっとスコピが傷つけられることに脅えていました。同級生がアバダケタブラされるところの沈黙や怖さがひしひしと伝わってくるようになって、シリアスなシーンの重厚感が増しましたね……
あの、この方に、

ディアエヴァンハンセンというミュージカルの主人公をやって頂きたいんですけど誰かオファーしてくれませんか?(突然の自我)

 

ローズ
細かい演技が最高でした。特に盗み聞きするシーン。
階段に座り耳をそばだてる→「自分が消えた世界がある」という言葉を聞く→はっとする→壁から手を離し俯く→後ろの子に促されるが聞きたくないとの素振り→後ろの子から肩に手を置かれ励まされる
また、上記のアルバスとスコーピウスのシーンでは「いいんじゃない自信をもって」は憐れみよりもずっと優しさが勝ってたように感じられました。

 

ロン/ハーマイオニー/ジニー/マルフォイ

ロンが会場中の笑いをかっさらってたので、最高でした。特に8/27マチネはめちゃくちゃ会場が温まってたので楽しかった。今後も楽しみなキャラクターです。
ハーマイオニーとジニーの強さも最高です。
マルフォイは不器用だけどしっかりとスコーピウスのお父さんをしていて、憎めないキャラクターだなと思いました。8/27マチネではより茶目っ気がプラスされていた気がします。

 

セブルス・スネイプ
私の推し、エヴァンズの騎士こと、セブルススネイプのお話を最後にしたいと思います。呪いの子でめっちゃ性格良くなって表れるので、びっくりしますよね。私もびっくりしました。
でも案外受け入れてる部分があって、
あの世界案外、人間の素質は変わらないけれど、環境的な要因で性格自体は変わっていると私は捉えていました。ハーマイオニーが男勝りになっていたように。だからスネイプ先生も現実世界とは違うルートを歩んでいるんじゃないかな。導く先生としての性格が強いし、そもそもあんまり性格が歪んでなさそうに見えます。だから、スコーピウスの話を素直に信じて導けたのかも知れません。
ただそんなに変化した世界でもリリーを思うことは変わらないところが彼の素敵なところ。やはりセブルスの人生のサビはリリーなのでしょう。
あともしかしたら彼はハリーポッターが死んだからこそ「彼を助けたかった」と心から言えたのかも。


ほんとに舞台装置は魔法みたいだし、目の前でハリーポッターの世界が広がっているのが夢のようでした。


次はハリポタカフェの予約を勝ち取りたい………!!